何であんな事言うんだ。
俺は、隣家の二階の窓と向かい合う出窓際に置いたベッドの上、
寝転がって足を組む。
天井たけー……。
今まで、こんな感じ方をした事はなかった。
体の左半分が、びりびりと隣家を意識する。
何で、あんな事、言うんだ?
望美。
◇
何であんな事言っちゃったんだろう。
学校帰り、もう外は半分暮れて、このカーテンを引いたっていい時間。
窓壁にぴったりと付けて置いた学習机に突っ伏せる。
傷だらけ……。
今まで、こんな感じ方をした事はなかった。
肩から上が、びりびりと隣家を意識する。
何で、あんな事、言っちゃったんだろう。
将臣くんに。
幼なじみだと、思っていた。
あれを、言うまでは。
あれを、聞くまでは。
「だって望美が一番適任だと思って。いっしょーーーぅのお願い!!!」
「…いいけどさ……。何処がいいのよ、一体?」
「カオカオ。あとぉ、最近急に色気出た感じなんだよねえ、大人っぽくなったって言うの?」
「そりゃそうだよ。あいつああ見えて三つ―――」
「三つ?」
「何でもない。じゃあ言っちゃうからね、もう今日言っちゃうからね、いいのね?」
「望美の名前にあやかって!よろしくね!」
◇◇
つきあうとかつきあわないとかじゃねーよ。
お前とは。
それは、確かにそうだった。今まで、ずっと。
そしてそれは、これからも変わらないと、そうだよな?
そういうことだよな?
って、何で俺はこんなこと考えてるんだ。
腹減らねー。
◇◇◇
つきあうとか、つきあわないとかじゃない。
将臣くんとは。
それは、確かにそうだった。今まで、ずっと。
そしてそれは、これからも変わらないと、私が。
私が、決めてしまった?
って、なんでこんなにきゅうきゅうするの?
胸痛い。
「―――がね、つきあって欲しいんだって。」
私が幼なじみだから。
俺とお前は、幼なじみだから。
いいんだ。
こうして同じ姿勢でいても、勝手に夜は更けてゆく。
びりびりする。神経が研ぎすまされる。
隣家は―――
―――今。
待てなくて、もう待ちたくなくて。
今がいい。
跳ねるように立ち上がって、窓を開ける。
聞こえる、同じ音が。正面から。
ガラス窓に映る、あの影が。
「望美!!」
「将臣くん!!」
違うんだ。
きっと、これからは。
いいえ違う、ずっと、これまでも。
手を伸ばしたいと、いま、思っているから。
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